Waxed Cotton Jacket collection

1) ワックスコットンとは

雨の多い英国で生まれた、綿の生地にワックス（蝋）を染み込ませた素材です。布の表面をワックスが薄く覆うことで、水滴をはじき、風を防ぎます。見た目はマットで上品。使い込むほどに折りジワや擦れが風合いとなって現れ、持ち主ごとの味が出ます。
ポイントは「防水布」ではなく「高い撥水と防風をもつ綿布」ということ。土砂降りに長時間さらす用途より、日常の雨や霧、冷たい風から守ることを想定した素材です。

2) どう作られて、どう機能するの？

高密度に織ったコットンを下地に、専用レシピのワックスを熱で含浸させます。
これにより
・水をはじく（雨粒が玉になって転がる）
・風を通しにくい（体温を奪われにくい）
・布ならではのしなやかさ（着慣らすほど身体になじむ）
といった性質が生まれます。
現代の透湿防水膜のようなハイテク素材と比べ、蒸れにくさを売りにする材料ではありませんが、綿ならではの肌当たりと経年の美しさが魅力です。

3) なぜ英国文化と結びつくの？

はじまりは19世紀。漁師や船乗りが、帆布に油脂を塗って荒天から身を守ったのが原型です。やがてハンティングや乗馬といったカントリーライフでも重宝され、紳士淑女の野外着として広まりました。
ワックスコットンは、気候への実用解であると同時に、自然とともに過ごす時間を楽しむ英国らしい美意識の象徴。使うほど味が深まり、長年連れ添うことで「自分だけの一着」へ育っていく点が、ヨーロッパで愛され続ける理由です。

4) お手入れは難しい？

基本は簡単です。
・泥や埃は乾いてから柔らかいブラシで落とす
・汚れは冷水で拭き取り、洗剤やドライクリーニングは避ける
・防水性が弱まってきたら、専用ワックスで全体を薄く“リプルーフ”（再ワックス）
この“手入れして育てる”プロセスも楽しみのひとつ。手入れの回数は着用環境によりますが、目安はシーズンに一度程度です。

5) 本物の生地と、仕立ての違い

スコットランド・ダンディーの老舗、ハリー・スティーブンソンは150年以上ワックスコットンを作り続けてきた名門。英国軍装備や冒険家のウェアにも使われてきた実績があるため、下地の綿の選定からワックスの配合、含浸工程まで完成度が高く、コシがありながらも着心地はしなやか。雨粒の弾きや経年変化の表情が美しく出やすいのが特徴です。
デュバリーは、その本格派の生地を採用しつつ、現代の着用シーンに合うように細部まで作り込みます。運動性を損なわないパターン取り、要所の補強、肌側の素材使いなどで快適性を底上げ。結果として、英国の物語性をまといながら、街でもアウトドアでも頼れる一着に仕上がります。使い込むほど色艶が増し、擦れやシワが一本の歴史になっていく──それこそがデュバリーのワックスコットンジャケットの醍醐味です。